
関節炎には天然II型コラーゲンがよく効く [監修]川西秀徳
[掲載]2007年04月27日夕刊
■関節炎に効くノウハウを解説
関節炎のつらい痛みは他人には決して分からないものである。しかも治らないとあきらめている人も多い。実際、関節リウマチは薬でも手術でも根本治療の難しい難病といわれる。また日本の国民病の一つといわれる変形性関節症の痛みや炎症を緩和する方法は対症療法に過ぎない。
ところが関節リウマチの権威であるハーバード大学医学部のトレンタム博士によれば、関節炎には天然(非変性)II型コラーゲンがわずかな量で効果をあげるというのである。本書はこうした最新の知見を元に、関節炎のメカニズムにはじまって、非変性II型コラーゲンの効果と仕組み、予防法と改善法、さらには関節炎に効く食べ物と運動に至るまで、丁寧に解説した1冊である。
とりわけ冒頭の患者の声には説得力がある。長年の痛みが非変性II型コラーゲンをとってからなくなったという証言や、再び山登りができるようになったという喜びの声に注目したい。編者によれば、関節炎は根治の難しい病気だが「不治の病」ではない。患者自身が改善に有効な生活スタイルを身につけることがポイントだという。関節炎に悩む多くの人、その家族にはぜひ本書を読んでいただきたい。
細胞から歯が再生 東京理科大のグループ、マウスで成功
2007年02月19日03時08分
マウスの胎児から歯のもとになる細胞を取り出して培養し、おとなの歯を再生させることに、東京理科大の辻孝・助教授(再生医工学)らの研究グループが成功した。作製の成功率は100%で、歯の中に血管や神経などもできていた。臓器を人工的に再生させる技術につながると期待される。18日付の米科学誌ネイチャーメソッズ電子版で発表する。
胎児期にはさまざまな臓器や組織が、上皮細胞と間葉細胞という2種の細胞の相互作用でつくられる。辻さんらはこれに着目。マウス胎児のあごの歯胚(はい)から取り出した両細胞を酵素でばらばらにし、どちらも高密度の細胞塊にしたうえで、区分けしてコラーゲンのゲルに入れると、培養に成功することを突き止めた。
さらに、この細胞塊を50匹のマウスの腎皮膜下に注射。14日後に、すべてで歯の形成を確認できた。歯の再生研究は他にもあるが、作製率は20〜25%にとどまっていた。
また、生体内で育てた歯や、生体の外で人工培養を続けた細胞塊を、おとなのマウスの歯を抜いた跡に移植すると、歯が高い頻度で生着した。この歯の内部には血管や神経のほか、クッションなどの役割を果たす歯根膜も再生できていた。
グループは今回、同様の手法で毛の再生にも成功した。今後、肝臓や腎臓などの臓器づくりも目指すという。
(2)運も味方に「杜仲茶豚」
2006年05月24日
96年2月に精肉店を出した東京の百貨店から、ある日注文を受けた。「松阪牛はよく分かった。今度は豚とか鶏のブランドを作ってほしい」
三重県内の精肉店では、牛肉を扱う比率が高い。だから、松阪牛などのブランド牛は扱っていたが、特別に開発した豚や鶏はなかった。
豚の商談のため岩手県の農家を目指した。新幹線の中で、部長にどんな豚なのか尋ねると、厳重な衛生管理のもとで飼育される、特定の病原体を持たないSPF豚だという。「それならよそでも扱っているじゃないか」と、がっかりした。
農家に上がると、奥さんが「粗茶です」といいながら杜仲茶(とちゅうちゃ)を出してくれた。聞くと「ここら辺は杜仲茶がよく取れるんですが、使い道に困っているんです」という。
「だったら豚にやってくださいよ」とお願いした。杜仲茶は血圧降下や利尿作用があるとされる健康茶。農場の社長は「豚がやせてしまうんじゃないか」と心配したが、とりあえず300頭は責任を持つ、ということで話をまとめた。
豚は牛と違って肥育期間が短く、7カ月で答えが出る。結果は思いの外、良かった。無駄な脂が取れ、消費者の好みにあった、さっぱりした豚ができあがったのだ。
後から聞いた話だが、SPF豚は、餌やりが自動化されており、頼んだ300頭だけでなく、飼育していた3万頭すべてがお茶を飲んでいたらしい。「やせていたらどうするつもりだったんだ」と大笑いしたが、初めて会った時、正直に「一部だけに飲ませることはできない」と言われていたら実現しなかったと思うと、運の強さを感じる。
「杜仲茶豚」は今では年間約1万7千頭を出荷する。その後、互いに信頼できる農家の人たちとの出会いで、天然飼料で育てた「すくすく鶏」や、優れた血統豚を掛け合わせた「鹿児島XX(ダブルエックス)」などのブランド化にも成功した。
■肌にいいと聞き、最近コラーゲンに凝っている。
コラーゲン精製で新技術
2005年04月14日
トリペプチドを製造「ゼライス」
家庭向け食用ゼラチンで日本一のシェアを誇る「ゼライス」(仙台市若林区)。同社はコラーゲンをアミノ酸三つの結合体という最小単位に精製し、商品化する新技術を開発した。この最小単位のコラーゲンは「トリペプチド」と呼ばれ、通常のコラーゲンの千分の1の大きさ。従来のものより、素早く直接体に吸収されるという。このトリペプチドの製造現場を訪ねた。(千葉恵理子)
コラーゲンは、豚の皮などから取り出した、ゼリー状や粉末状の原料を、溶かしたり、抽出したりして精製したものが原料となる。
この精製した原料をバイオリアクター(生物学的反応器)と呼ばれる特殊な機械にかけ、分解する。バイオリアクターとは、酵素や酵母、細胞などの生体反応を利用した特殊な反応装置のことだ。
このバイオリアクターのある場所は作業服に着替え、エアシャワーを浴びなければ入れない。総務部長の鈴木義昭さんによると「医薬品に近い製造環境」だという。
バイオリアクターはアルカリや高熱を使った製造装置に比べ、穏やかな条件で利用できるのが特徴。日本酒を造る際なども、コメと水に酵母で反応させる点は同じだが、反応は1回限りだ。だが、バイオリアクターでは連続して安定的に反応させ、分解できるようになっている。
トリペプチドのバイオリアクターが具体的にどんな仕組みになっているかは、特許申請中のものもあり「企業秘密」(鈴木さん)だという。
このバイオリアクターでコラーゲンを分解、精製するとコラーゲンの最小基本体「トリペプチド」ができる。これをさらに精製し、乾燥させて袋詰めすると商品が完成する。
さらに商品は分子の大きさを測ったり、分析装置にかけてトリペプチドがきちんと含まれているかを調べたり、味やにおいをチェックしたりする。現在は月に約10トン製造するという。
トリペプチドは肌のはりと潤いを保つために、化粧品などの原料に利用されているほか、ひざの痛むお年寄りや、靭帯(じんたい)、関節を酷使するスポーツ選手も健康補助食品として利用しているという。実際にプロサッカーチームで使用しているところがあり、「反応は好評」(鈴木さん)だそうだ。
あごの痛みが気になったら
あごの関節の構造を知り、顎関節症ではどこに障害がおこっているのかを見ておきましょう。 顎関節というのは、両耳の前に指を当てて口を開け閉めしたとき、盛んに動く部分です。顎関節は、頭の骨(側頭骨)のくぼみ(下顎窩)に、下顎骨の丸く突きでている下顎頭が入り込む構造をしています(図1)。 下顎窩と下顎頭の間には関節円板というクッションの役目をはたす組織があり、下顎窩と下顎頭が直接こすりあわないようになっています。
関節円板は骨ではなく、コラーゲンという膠原線維がぎっしりつまっています。この関節円板と下顎頭が正常に移動することによって、口を大きく開けたり、閉じたりすることができるのです(図2)。 これを見るとわかるように、正常では関節円板が下顎頭と一緒に移動しています。しかし、障害がある場合、関節円板がずれてひっかかり、はずれるときに音がし、ひっかかりが強くなって下顎頭の動きがさまたげられ口が開かなくなることもあります。 こうした関節円板の障害による顎関節症も含めて、顎関節症には4つのタイプがあります。筋肉の障害(I型)、関節包・靭帯の障害(II型)、関節円板の障害(III型)、骨の変形(IV型)の4つです。 「もっとも多いのは筋肉の障害ですが、エックス線やMRIなどの画像検査で関節円板の障害や骨の変形が診断しやすいことと、IV型、III型の順に優先診断される診断手順のために、I型やII型の診断がつきにくい状況にあります。画像診断の発達のメリットの反面、画像で診断できない病態診断の遅れを招いたともいえると思います」と和嶋氏は話します。
正常な場合
口を開けるときは下顎頭がまず回転し、次に関節円板と一緒に下顎窩から前に移動します。閉じるときは、下顎頭が関節円板と一緒に後ろへ移動し、下顎窩のなかに収まります。
音がする状態
関節円板がずれて下顎頭にひっかかり関節円板が下顎頭に乗るときに音がでます(クリック)。
口が開かない状態
ずれた関節円板と下顎頭の引っかかりが強くなると、関節円板が下顎頭に乗ることができずに障害物となって下顎頭が前に動きにくくなり口が少ししか開かなくなります(ロック)。(記事提供:保健同人社)
【暮らしと健康特集】冬の乾燥肌ケア
春から秋にかけてはすべすべだった肌も、冬になると誰でもかさつきがちです。皮膚にはもともとうるおいを保つためのメカニズムがあるものの(カコミ)、冬になると、寒さのためにそのメカニズムがうまく機能しなくなり、乾燥しやすくなるのです。 青山ヒフ科クリニック院長の亀山孝一郎氏は、その原因について、次のように語ります。 「寒い季節には、からだは体温の低下を防ぐために、皮膚に送り込む血液の量を減らします。その結果、皮膚の代謝が低下し、皮脂の分泌も少なくなります。さらに、外界の環境から皮膚を守っているバリア機能の主役である角質細胞間脂質の産生も低下し、汗として皮膚の表面に供給される水分も減るため、皮膚の水分はどんどん蒸発してしまうのです」 しかも、冬は湿度が低く空気が乾燥しているため、皮膚の乾燥に拍車がかかり、「乾燥肌の人だけでなく、普通肌の人でも、顔をはじめ全身にかさつきの症状がでやすくなります」(亀山氏) 肌の乾燥はそれだけでも不快ですが、放置しておくと、さまざまな肌の老化を招くことも問題です。 「とくに乾燥しやすいのは目の周りで、いわゆるちりめんじわがでやすくなります。また、乾燥によって皮膚の表面が粗くなると、光の乱反射がおこり、肌本来の鮮やかさがなくなり、くすみが出現します」(亀山氏) さらに、皮膚の代謝が低下することにより、コラーゲン、エラスチンという皮膚に張りをもたせる線維の合成が低下するため、肌があたかも垂れ下がったように見えてしまうのがたるみです。そして、もう一つ気になるのが毛穴の拡張です。 「コラーゲン、エラスチンには毛穴を引きしめる作用もあるため、これらの線維の合成が減れば、当然のことながら毛穴も開いてきます。冬になると、肌はかさついているのに、毛穴が開いてにきびが点在するという人は少なくありません」(亀山氏) コラーゲン、エラスチンが減ると、皮膚の下を走っている血管が透けて見え、くまも目立つようになります。 このように、しわ、くすみ、たるみ、毛穴の開きなどの肌の老化は、乾燥による「水分・油分の低下」「代謝の低下」と密接にかかわっています。乾燥を防ぎうるおいを保つスキンケアは、肌の老化防止のためにも不可欠です。
健康な皮膚の構造は図1のようになっています。皮膚は擦りむいても血のでない表皮と、より深い部分にある真皮に大別されます。
このうち真皮には、水分の保持と皮膚のしなやかさの維持を担っているコラーゲンという線維がたくさんあります。コラーゲンとコラーゲンのあいだには、ヒアルロン酸など基質と呼ばれる物質がたっぷり含まれており、ヒアルロン酸自体も非常に高い保湿機能をもっています。また、コラーゲンには、エラスチンという弾性線維がコイル状にからみついて存在し、これが肌に弾力性や張りを与えています。さらに、真皮にはコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンの産生に深くかかわっている線維芽細胞も散在しています。真皮と表皮の境目には、基底膜という膜があります。そして、表皮にはケラチノサイト(表皮角化細胞)と呼ばれる細胞が石垣のように並んでおり、いちばん上には角層があります。
角層には、セラミドなどの脂質、尿素やアミノ酸などが散在していますが、これらの物質も水分を保持する機能をもっていることから、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor、NMF)と呼ばれています。角層の上には皮脂膜があります。
このうち真皮では、コラーゲンやヒアルロン酸が水分を保持しています。しかし、表皮にたくさん存在するケラチノサイトに栄養と水分を補給するため、ある程度の水分(体液)は基底膜を通過して表皮にしみだしていきます。これらの水分は、ケラチノサイトに栄養を補給したあとに角層に達します。ここで角質細胞間脂質、天然保湿因子がうまく水分をキャッチすればよいのですが、天然保湿因子に量の不足やバランスの乱れがあると、水分はすみやかに角層を通過して、乾燥肌につながってしまいます。それでも、角層をおおう皮脂膜がしっかりしていれば、水分はなかなか皮脂膜を通過できません。
(記事提供:保健同人社)
【暮らしと健康特集】冬の乾燥肌ケア
肌の乾燥を防ぐために、まず大切なのは、適切なスキンケア。肌はもともとコラーゲン、ヒアルロン酸、天然保湿因子(NMF)、角質細胞間脂質、皮脂膜などの保湿成分をもっていますが、冬はこれらの機能がすべて低下します。これらの成分を配合した化粧水、乳液、クリームなどを重ねて使用します。 「本来の肌がもっている、水分を保持するバリア機能を再構築することが大切です」と亀山氏。 もっとも簡単なのは、(1)ワセリンで皮脂膜の再構築をする方法です。 「ワセリンは強力な皮脂膜を形成しますが、テカテカする、使用感が重いなどの欠点があります。気になる人は、皮膚科に行くと、こうした欠点を改善した眼科用のワセリンが保険の適応で処方してもらえるはずです」(亀山氏)
それでもかさつきが改善しない場合には、(2)天然保湿因子(NMF)を塗った上にワセリンを塗るようにします。尿素入りクリームならば薬局で簡単に手に入ります。ただし、尿素入りクリームは乾燥肌につけるとヒリヒリすることがあるため、そのような場合や(1)の方法では乾燥が改善しない場合には、(3)コラーゲン、ヒアルロン酸などを配合した乳液を最初に塗り、尿素入りクリーム、ワセリンと重ねて塗っていきます。
「とくに、目の周りなど乾燥しやすい部分には、多めに使用するとよいでしょう」(亀山氏)
また、油溶性ビタミンC誘導体も乾燥肌の改善に最適な成分です。さまざまな皮膚のトラブルに有効なビタミンCは、細胞にエネルギーを補給し、代謝を促進するはたらきや、肌の老化を促進する活性酸素を除去することが知られていましたが、さらに最近の研究で、角質細胞間脂質の主成分セラミドの合成を促進し、バリア機能をアップさせる作用があることも明らかになりました。
しかし、水溶性ビタミンC誘導体や天然型ビタミンCは、敏感肌や乾燥肌の人が塗ると、肌がヒリヒリするなど刺激症状がでることがあります。この点を改良したのが油溶性ビタミンC誘導体で、濃度を上げても刺激症状は出現せず、ビタミンCの効果だけが期待できます。
(記事提供:保健同人社)
【暮らしと健康特集】美容と若返り医療
「ケミカルピーリング」は、にきびあとや小じわやちりめんじわの改善を目的とする治療です。AHA(アルファヒドロキシ酸)、TCA(トリクロール酢酸)などの酸性の薬剤をもちいて化学的に溶かし、皮膚の再生を促し、美しい肌をとりもどそうというものです。
「治療目的によって使用する薬剤や溶かす皮膚の深さは違いますが、現在、国内のエステや多くの美容外科、皮膚科で行われているケミカルピーリングは、かなりうすめた薬剤を使用し、おもに角質を剥離しています。そのため、副作用が比較的少ないのですが、持続的な効果はあまり期待できません」(吉村氏)
ちなみに、欧米では、角質や表皮だけでなく真皮までも溶かす深いピーリング(ディープピーリング)が行われており、その効果も実証されているものの、「東洋人の場合、炎症後色素沈着をおこしやすいため、ディープピーリングは日本ではほとんど行われていないのが現状です」(吉村氏)
ケミカルピーリングでは角質や表皮をはがすので、表皮が本来もつバリア機能や保湿機能が失われます。そのため、術前と術後の対処をしっかり行ってくれる医療機関で受けることがとても重要です。通常、ケミカルピーリングは外来で行われ、所要時間は15〜30分、費用は1万〜2万5000円です。なお、後述のレーザーでも、ケミカルピーリングと同じように、皮膚を削って再生を促す治療が行われています。
俗に“カラスの足あと”と呼ばれる笑ったときにできる表情じわに有効なのが、ボトックスです。神経毒の一種、ボツリヌス菌毒素をしわの原因となっている表情を動かす筋肉に注射して、その筋肉を部分的に麻痺させます。
「非常によく効きますが、笑ったときにも筋肉が動かなくなるので、表情は少し変わります」(吉村氏)
ボトックスは筋肉の緊張による額のよこじわや眉間のたてじわにも効果的ですが、くすりの作用が3〜6か月しか持続しないため、必要に応じて追加しなければなりません。費用は1回5万〜10万円程度です。
一方、静止時にもめだつような眉間や上唇のたてじわには、コラーゲンの注射が有効です。注射による腫れもわずかで、当日からふつうの生活ができますが、3〜10か月程度で吸収されてしまうため、くり返し注射しなければなりません。また、コラーゲンは牛から抽出したものを使うため、3%の人にアレルギー反応がでます。
「必ず皮内テストを受け、アレルギー反応のでないことを確認してから受けるようにしましょう」(吉村氏)
費用は1回5万〜10万円。
(記事提供:保健同人社)
ヘルシーリポート:膝や関節の痛み 老化、どう防ぐ?
◇牛乳に含まれるN−アセチルグルコサミンが軟骨再生を促進、日常的に摂取して保護と改善を
高齢になるといろいろな悩みごとが増えてくる。その一つが膝(ひざ)や関節の痛みだ。階段の上り下りや重いものを持って運ぶときに、そのつらさを感じることが多い。骨の老化を防ぐ方法はないのだろうか。【小島正美】
■50歳前後から
膝の関節が痛む変形性膝関節症は50歳前後から増え始め、70代になって急激に増加する。特に女性に多く、閉経後の女性ホルモン不足による骨密度の低下などが関係しているといわれる。
膝が痛みを伴うことなく、スムーズに動くには、軟骨がしっかりしていないといけないが、軟骨は年を重ねるにつれて、すり減っていく。すり減った軟骨同士がこすり合わさると痛みが生じる。
膝関節症の治療としては、ステロイドや非ステロイド系抗炎症剤が使われる。効果がある半面、胃腸障害や免疫障害など副作用の心配もある。そうした中、日常的な食品に含まれ、摂取することで膝関節症を改善する方法として注目されているのがグルコサミンだ。
■西欧では治療薬
グルコサミンはブドウ糖にアミノ基がくっついたアミノ糖化合物で、軟骨に水分の保持や弾力性をもたせるコラーゲンやヒアルロン酸など糖鎖の生合成に必要な成分だ。
グルコサミンは西欧では軟骨の再生や膝関節の不調を改善する治療薬やサプリメントにも用いられている。
いうまでもなく関節症の予防には、日ごろからストレッチを行ったり、ウオーキングをしたりして、体を動かすことが基本だが、グルコサミンの摂取で効果的に関節を守るのも選択肢の一つだ。
■1000ミリグラムで効果
同じグルコサミンでも二つのタイプがある。日本の企業が独自に開発した天然型グルコサミンの「N−アセチルグルコサミン」(NAG)の試験結果を見てみよう。
大阪外国語大学保健管理センターの研究者らは変形性膝関節症の患者31人(うち女性24人、平均年齢74歳)を対象に、125ミリリットルあたり1000ミリグラムと500ミリグラムのNAGを含む低脂肪ミルクを8週間飲んでもらい、NAGを含まない低脂肪ミルク(プラセボ)を飲んだ人たちに比べて、歩行時の膝の痛みや屈折具合、日常の動作などで差が出るかどうかを調べた。
その結果、1000ミリグラム摂取群と500ミリグラム摂取群で「かなり有用」「やや有用」を合わせ、約7〜8割の人が自覚症状で効果があったと医師の診察で判定された。
また、NAGのサプリメントを摂取した若い女性(平均年齢26歳)で皮膚の保水量が増えるなど肌の改善が見られたという大阪市立大学の研究報告もある。
■甘い天然型
牛乳など食品の健康機能科学に詳しい齋藤忠夫・東北大学大学院農学研究科教授によると、天然型のN−アセチルグルコサミンは、エビやカニの甲羅のキチン質から酵素を使って取り出したもので、もともと人の関節や皮膚、目の角膜などに存在するのと全く同じものだ。
欧米で使われているタイプのグルコサミン(グルコサミン塩酸塩やグルコサミン硫酸塩)には苦み感があるのに対し、NAGには甘みがある。
齋藤教授は「NAGはミルクの中にも含まれている成分なので、安全性の面では安心できる」と話す。
通常の牛乳にも200ミリリットルあたり20ミリグラム程度のNAGが含まれているが、人の試験で分かった有効量の500〜1000ミリグラムに比べるとかなり少ない。齋藤教授は「年をとるとNAGを合成する能力が低下してくるので、サプリメントなどで補ってやれば、関節の保護になるのではないか」と話す。
■硬骨も守りたい
とはいえ、軟骨だけを丈夫にすればよいというものではない。
私たちの体には約200本の骨がある。足腰を丈夫にするには、関節部分の軟骨だけでなく、骨本体の硬骨もしっかりと作らねばならない。一見硬そうに見える硬骨の組織も、日々、新陳代謝を繰り返している。骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞がバランスよく働かないと丈夫な骨はできない。
■MBPも大事
そうした骨作りに必要なのがカルシウムだ。そして、カルシウムの吸収を促すビタミンDやビタミンK、骨芽細胞を増やし、カルシウムを骨に蓄える働きをする乳塩基性たんぱく質(MBP)の摂取も大事だ。MBPは微量ながら、母乳や牛乳にもともと含まれる成分だ。
最近、牛乳を有害視する本が出ているが、日本酪農乳業協会(東京都)は「牛乳を飲むほど骨粗しょう症の予防になるという研究結果が世界中で報告されている。牛乳を飲んで体内のカルシウムが減るようなことはない」と科学的根拠に基づいた研究報告こそが重要だと話している。
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日本ミルクコミュニティ(東京都)は5月末まで、10万人を対象にN−アセチルグルコサミンなどを含んだ低脂肪タイプの牛乳(200ミリリットル瓶の宅配)の1週間無料試飲を実施している。問い合わせは0120・759・369。
毎日新聞 2007年4月28日 東京朝刊
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